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はじめに

【内容について】
 このブログはGroupAsk様制作のフリーゲーム「CardWirth」のシナリオプレイ結果(以下、リプレイ)を小説風に書き記したものになります。
 ゲームのリプレイの文章化という都合上、シナリオ内容の情報公開及びネタバレが含まれております。あらかじめご了承ください。

【著作権について】
 ゲーム「CardWirth」本体の著作権はGroupAsk様にあります。
 当リプレイ内で紹介させていただいたシナリオ、及び作中にて登場する、各シナリオに関連するキャスト、スキル、アイテム、召喚獣の著作権は全て、それぞれのシナリオ作者様にあります。(シナリオ作者様の情報については該当リプレイの後書きのページにて記します)

 当リプレイ小説の文章は、全てフィクションです。作中に登場、もしくはプレイさせていただいたシナリオ内に存在する、実在する人名、地名、団体名とは、一切関係ございません。

 当ブログにおけるリプレイの文章の著作権はGM屋にあります。
 ゲームのリプレイという都合上、シナリオで使用された文章をそのまま利用、あるいは場合により文章、登場人物のセリフ、行動を改変しておりますが、いずれの場合も各シナリオ及び作者様の権利を侵害する意図はございません。

【GM屋への連絡について】
 リプレイの感想、ブログに対する意見、要望等、GM屋に対する連絡は、お手数ですがブログのWeb拍手やコメント欄、及びGM屋のTwitterにお願いします。
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更新履歴

【2019年】
2019/08/05…PC1・ジョナサン
       PC2・エリオット
       PC3・ナオミ
       PC4・ガルディス
       PC5・ローズマリー
       PC6・エリカ
       その名はワースハンターズ
2019/08/13…ゴブリンの洞窟後書き
2019/09/15…家宝の鎧後書き
       各リプレイ下部のリンク表記を調整

【2020年】
2020/01/07…Sad in Satin 1後書き
2020/01/18…Sad in Satin 1 一部の漢字表記を修正・統一

CardWirth リプレイ小説 目次

PC1・ジョナサン
PC2・エリオット
PC3・ナオミ
PC4・ガルディス
PC5・ローズマリー
PC6・エリカ
その名はワースハンターズ

【レベル1】
ゴブリンの洞窟   後書き
家宝の鎧   後書き

【レベル2】
Sad in Satin ・ 1   後書き

話の時系列順の目次は→こちら

CardWirth リプレイ小説 時系列順目次

PC1・ジョナサン
PC2・エリオット
PC3・ナオミ
PC4・ガルディス
PC5・ローズマリー
PC6・エリカ
その名はワースハンターズ

ゴブリンの洞窟   後書き
家宝の鎧   後書き
Sad in Satin ・ 1   後書き

通常の目次は→こちら

リンク追加・不完全書庫(成瀬 悠 様)

ご無沙汰しております。GM屋です。

この頃、というか数年単位で更新できず申し訳ございませんでした。
一応地道には書いてはいますのでご容赦いただければと思います。

さて、そんなサボりがちなリプレイブログにリンクの申し出がありました。
成瀬悠(なるせ ゆう)様の

不完全書庫

でございます。

メインとなるのはオリジナルの一次創作ですが、一方でカードワースのリプレイやイラストも扱っております。
カードワースの方は「無音の楽団」及び「銀鈴檻」の活躍、特に無音の楽団のカクヤさんとサレトナさんの恋愛模様が多めですかね?

そんな成瀬さんからは即興でローズマリーを描いていただいちゃいました!
ローズマリー@wing_order-001

素敵なイラストと文章が満載の「不完全書庫」を、よろしくお願いいたします!

Sad in Satin・後書き

 第3回のシナリオはPabit様より「Sad in Satin」でした。

 Readmeファイルには「貧乏クジを楽しんでください」とありましたし、基本コメディのワースハンターズならゾンビにやられる、あるいは松明を使い切って大パニックとかの方が「らしい」んじゃないかな~とは思ったのですが、……完全クリアで行きたかったんです。

 今回のリプレイでは、実プレイとの差異がいくつかあります。

 第1に依頼を受ける理由ですが、リプレイでは「宿の修理費を払うため」となっておりますが、実際はこんな話はありません。
 ただ普通に依頼を受けます。
 しかもこの修理費に使った1200spは、中身はガルディスとエリカの技能代なんですよね……。
 設定上ガルディスもエリカも該当スキルを「最初から使える扱い」にしてるため、このような描写になりました。
 エリカのスキルはGM屋オリジナル作成であるため、ユーティリティで600sp消費させました。

 第2に洞窟突入時の選択肢。
 逃げて突破する・ゾンビを全部倒す・遠回りする・脱いで入る(特定条件で発生)の4つがありますが、実プレイではどれか1つを選ぶと「キャンセル不可能」なんですね。
 ただワースハンターズの性格を考えると逃げて突破は当然ですが「脱ぐことを検討する」くらいはしそうだなぁと思ったんです。
 そこでリプレイでは「脱ぐ→キャンセル→逃げて突破」ということになりました。

 第3に洞窟での行動について。
 これはもう……、やっちゃいましたw
 シナリオ内でも「松明を投げ込んで先の状況を知る」という話はあったんですが「戦闘中に松明を使用すると先の道へ投げ込んでくれる」というのを完全に失念してたんですw
 なぜ戦闘中に使うという発想ができなかったのかとw
 そこであらかじめデバグ宿でプレイし、地図をメモ帳で作っておき、それに従って逃げて、リプレイでは戦闘中に松明を投げた扱いにする……、なんてことをしました。
 で、リプレイを書いてる最中にふと気になって、デバグ宿で戦闘中松明投げをやってみたら、できてやんのw

 いや、それにしても、レベル2で完全突破はきつかった……。
 実際クリアするまでに途中セーブも挟んで、合計75回はやり直しました……。
 回避が足りないから、別のスキルを買っておいてそれでドーピングを、ってのも考えたんですが、それでもうまくいかない。
 ので、もうね、根性でやり抜きましたよw
 道中の石弓はナオミかガルディスなら実は一定確率で発射可能だった(実際何回かは成功してた)んですが、いくらリプレイにするにしてもやりすぎだと思ったので失敗でいいよなぁと。
「ぶたハンマー」も無視しました。
 誰も使わないだろうしw
 ついでに「川越えで鷹に襲われる」話も盛り込みたかったんですが、さすがに断念しました。
 次回のリプレイでちょっとだけ入れようかなぁ……。

 そしてここまで書いておいて言うのもなんですが、はっきり言ってこのシナリオは実際にプレイする方が面白いです。
 リプレイでももうちょっとドタバタ劇にしたかったんですが……、それはまたの機会にしましょう。

 エリカに習得させた「雷精の掌」はGM屋オリジナル作成のスキルです。
 性能は以下の通り。

・魔法属性、回避属性、沈黙時に使用可能
・精神力+勇猛性
・技能レベル1、使用時の能力値修正無し
・全属性レベル比3ダメージ、肉体属性1ラウンド束縛
・敵単体、成功率修正+1
・キーコード→雷による攻撃、電気による攻撃、魔法、攻撃

 近接攻撃の電撃でスタン効果あり、ってのが欲しくて……。
 接近戦に弱いエリカのほぼ唯一となるであろう近接技。
「超少女明日香」のアレがやりたかっただけなんです……。

Sad in Satin・1←Prev
Sad in Satin・2←Prev

Next→伯爵様の紅い薔薇

Sad in Satin・2

「さて……」

 ひと通りの情報を聞き出した冒険者たちは決断を迫られていた。

 冒険者の仕事は端的に言えばゾンビの一掃で、その打ち合わせのために領主邸へ行こうとしている。
 通れる道は依頼目的でもあるゾンビが巣食う洞窟と、遅刻必至の山道のみ。
 普段の装備品はほとんどが質入れされており、今の格好は貸衣装でまともにゾンビと戦える状態ではない。

「選択肢は3つ。ゾンビとの戦闘はできるだけ避け、ひたすら逃げながら突破する。ゾンビ退治が仕事なのでこの際全てのゾンビを一掃してしまう。遅刻は仕方ないとして回り道を通る。ただしいずれのパターンもそれなりのリスクを背負うことになります」

 ひたすら逃げる場合、当然ゾンビからの攻撃は受けてはならず、逆にゾンビに対して――特に接近しての攻撃はしてはならない。
 攻撃によってゾンビの返り血や飛び散った腐肉を浴びてしまえば意味が無いからだ。

 一掃する場合、これは一見特に問題無いように思えるが、今は「まだ依頼の雇用が成立していない」状態である。
 この状況で事前に依頼を遂行してしまえばただの慈善事業になりかねない。

 回り道を通るのは最も安全だ。
 だが時間や礼節にうるさい依頼人のこと、いかなる理由があろうとも遅刻したというだけで報酬ゼロの可能性がある。

 今のワースハンターズにとって最も理想的な展開は当然「服を一切汚さずに、刻限に間に合い、依頼の雇用を完全に成立させ、全てを完璧にこなす」ことだ。
 となれば、選ぶべき選択肢は最初の「ひたすら逃げる」しか無い。
 成功すれば大きいが失敗する可能性は非常に高い……。

 エリカがそう結論付けようとしたその時だった。

「あのさ……」

 ふと名案を思いついたようにジョナサンが指を鳴らす。

「この際さ、服を脱いで行くってのはどう?」

 その発言の内容を理解するのに数秒を要した。

「……はぁ!?」

 突然の提案に理解できないとばかりにエリカは素っ頓狂な声を上げる。

「ち、ちょっと待ってください。脱ぐってどういうことですか!?」
「どういうことも何も、そのままの意味だけど?」

 さも当然と言わんばかりの表情をしたリーダーに女性陣が抗議の声――というか怒号を上げた。

「い、いやいやいやいや! 何を馬鹿なことを!?」
「ふ、ふざけないでよ! なんで脱がなきゃいけないのよ!」
「こんな衆人環視の前で脱げって、頭おかしいんですか!?」
「だってゾンビは上等な服が憎いんでしょ、だったら脱げばいいじゃん?」

 ジョナサンの考えはこうだ。
 件のゾンビは貴族が着るような上等の衣服を憎しみの対象にしており、逆にボロの衣服であれば自分たちの仲間だと思い込む。
 上等の服を着ているからゾンビに襲われるのであれば、その衣服さえ無ければゾンビは襲ってこないということだ。
 話し合いのための貸衣装しか持ってきていない以上、ボロの衣装に着替えるのは不可能。
 であれば、もはや今の衣服を脱いで洞窟を抜けるしかない。

「なるほど、そら名案やな」
「うんうん、オラもそう思うだ。策士だぁ。立派だーよ」

 ジョナサンの「名案」に大工と盗賊が賛同する。
 確かに脱いでしまえば衣服を汚す心配は無いし、そもそもゾンビに襲われない。
 なるほど確かに合理的だ。

 だが女性陣はもちろん、男性陣からも反対が出た。
 エリオットである。

「……私は反対だ」
「え、なんで?」
「当たり前だろうが! 確かに合理的かもしれんがだからってそんな馬鹿馬鹿しい真似ができるか!」
「そ、そうです! いくらなんでも短絡的に過ぎます! その前に男の前で脱げるわけないでしょうが!」

 エリオットに乗る形でナオミも文句をぶつけてきた。
 それはそうだろう。
 うら若き18歳の女性が同じ年代の男の前でどうして進んで服を脱げるというのか。

「なるほど確かにナオミはそぉやな。となると、ナオミさえ解決できればそれでええんやな」
「は? なぜ?」
「そらそぉやろ。エリカとローズマリーはまだ子供やで。別に見られても問題あれへんやろ?」
「問題大アリに決まってんでしょうが! アタシはこれでも16なのよ!」
「私だってエルフ年齢で130歳ですからね!」

 ガルディスの失言とも取れるその言い方に子供扱いされた少女2人は憤慨する。
 当然だ。
 いくら子供だとしても彼女たちは女性なのだから……。

「でもさ、ナオミ。これ以外に確実で、安全で、しかも早い方法が他にあるの?」
「そ、それは……」
「無いでしょ。これがつまりベストなんだよ。だからほらこの際はしょうがないってことで、さっさと裸になっちゃいなよ」
「い、嫌に決まってるでしょう! というか、どうして裸なんですか! それならせめて下着だけでもいいでしょう!?」
「……良くないんだよな、それが」

 そう、ナオミの言う通り「服を脱ぐだけ」であれば最悪は下着だけを身につければそれでいい。
 少なくとも大事な部分は隠せるから。
 だがそうはいかなかった。

 なぜなら、ジョナサンの貸衣装は下着にも及んでいたのだから。

「いや俺もシルクの下着なんて使わなきゃ良かったって思うんだけどさ……」
「ワシもや。ワシなんてサテンの下着やで。見えへんとこまで高級にしたんはアカンかったなぁ」
「見え見えの嘘つかないでください! そんなものまで用立てる貸衣装屋がありますか!」
「そんなこと言われたって、はいてたんだからしょうがないじゃない。っていうか、ナオミも同じのはいてるんでしょ?」
「……は?」
「だって俺たち全員、同じ貸衣装屋から衣装を借りたんだから」
「……!」

 しまった、と思った。
 確かにワースハンターズは全員が同じ貸衣装屋から衣装を借りたのだ。
 高級な下着まで揃える貸衣装屋など無いと言ったが、この男どもがシルクやサテンの下着をはいているということは、必然的に女性陣も同じ素材の下着を身に着けていることになるのだ。

 つまり、ナオミはもちろん、ローズマリーとエリカも「下着まで脱がなければ」ゾンビに襲われてしまうのだ。
 だが……、

「だ、だからってこの状況で脱げますか!」
「そうは言ってももう時間無いんだよ? 俺だって恥ずかしい思いをするんだからここはもう一蓮托生、というか、洞窟もみんな裸なら恥ずかしくないってことで」
「無理なものは無理です! 大体そんなこと言って合法的に私の裸が見たいってだけでしょ、このナンパ男!」
「そ、そんなぁ……」

 当たり前だ。
 いくら服を守るためとはいえうら若き女性が男の前で喜んでストリップショーなど演じられようはずがない。
 現役の軍人として、血と暴力と悲鳴が飛び交う戦場に身を置くのは日常茶飯事だが、だからと言って女を捨てたわけではないのだ。
 ナオミの拒絶は当然のものだったが、せっかくの名案を否定されたとジョナサンはうなだれる。

「せっかくみんなの安全を考えたつもりだったのに……。誠意が通じなかったんだなぁ……」

 今のやり取りのどこに誠意があったのだろう。
 脱衣反対派は揃ってリーダーに冷ややかな視線を送る。

 だがジョナサンはまだ負けてはいなかったらしい。

「……それなら最後の手段。これは言いたくなかったんだけど……」
「こ、今度は何ですか……?」

 うなだれていたかと思えば、力を取り戻したかのようにゆらりと立ち上がるジョナサン。

「なあ、ナオミ。俺たちって何だろうね?」
「……冒険者、でしょうか?」
「そう、俺たちは冒険者!」

 拳を握り締め、今、リーダーの演説が始まる。

「平和に見えるこの世界、だが見えない危険は数多く存在する。その危険に自ら飛び込み、しかも生き残る。それが俺たちの世界、それこそ俺たちのルール、俺たちの生き様!」
「…………」
「そして俺たちの目の前に、まさに危険がある。そこに飛び込み、危険をぶっ飛ばすことができるのは誰だ? そう! 俺たちだ!」
「…………」
「俺たちはそのためにここに来た! そのためにここにいる! ここで怖じ気づくわけにはいかないんだ! たかが服1枚のために目の前の危険から逃げるわけにはいかないんだ! そんなことで冒険者を名乗るわけにはいかない!」
「……言葉はかっこいいんですけども」

 ジョナサンが熱弁を振るう度にナオミの熱は急激に下がっていく。
 無論、ジョナサンがそのことに気づくわけがない。

 そしてそれは、同時にジョナサンの命が奪われる危険性をはらむことになるのだ。

「まあつまり俺が言いたいのはね……」

 そうしてリーダーは女軍人に向き直る。

「選べ! 脱ぐのは誇りか、ふ――」

 服か! と叫ぼうとしたその瞬間だった。

 ジョナサンの目の前で銀のきらめきが横一文字に走った。
 きらめきが消えた後、つやの無い金髪が何本か宙を舞う。

 ナオミの右手に握られた儀礼用の長剣が抜き放たれ、刃の付いていないただの棒のはずのそれが、ジョナサンの髪の毛を斬り飛ばしたのだ。

 銀閃と同時に起こされた極小規模の突風が斬られた髪の毛を吹き飛ばし、静寂が残る。

「…………」
「…………」
「……ジョナサン」
「……はい」
「……次にくだらないこと言ったら、今度はその首を落とすわよ?」

 ナオミから普段の丁寧な口調が抜けていた。
 ワースハンターズの面々は知っている。
 これがナオミの本来の口調であることを。
 そして、今の状況でその口調が出るということは、彼女は本気で怒っているということを。

 彼女が最も嫌う貴族からの依頼に加え、ナンパなリーダーから服を脱ぐように強要された。
 その不満や怒りがついに爆発したのだ。
 これでジョナサンがもう二言三言ほど追加で何かを言っていれば、間違いなく彼の首は刃の付いていないはずの剣で綺麗に斬り落とされていたことだろう。

 ジョナサンの敗北が確定した瞬間だった。
 ただ付け加えるとすれば、この時の彼には実は下心など一切無かったのである……。

*     *     *

「徹底的に避けましょう」

 ナンパ男を黙らせ、自らの裸を守り抜いた女軍人が方針を決定するのにそう時間はかからなかった。

「賛成です。リスクは大きいですが、この状況でとれる最善の手はそれしかありません」
「安全策を採用してほしかったが、仕方ないな……」

 ナオミの言葉に他の面々の賛同の意を示す。
 最初は脱ぐことに賛成していたガルディスも、ナオミのあの剣幕を見てしまった以上、女性陣の意見に従うしかなかった。

「まあ遅刻なんかして仕事がおシャカになったらそれこそ大損だものね」
「大体ここでゾンビ退治なんかしたら慈善事業や。ワシもそれは嫌やで」

 そう、この時点で洞窟内のゾンビを倒してしまうわけにはいかない。
 危機回避のためにある程度は倒さざるを得ないだろうが、勢い余って全滅させるような真似だけは避けなければならないのだ。

「でもさぁ……」

 名案を潰されたジョナサンが洞窟の奥を睨む。

「問題はそのゾンビたちでしょ。全滅させずにどう捌くの。服を汚しちゃうわけにはいかないでしょ?」

 そう、それこそが最大の問題だ。
 ゾンビという魔物は言うなれば動く「死体」だ。
 死んでしまったその肉体は形を維持する力を失っており常に崩壊を続けている。
 そんなゾンビを力任せに殴りつけでもしたら返り血ならぬ「返り汁」を浴びる破目に陥るのは間違いない。
 最悪の手段としてゾンビを倒してしまう場合、その攻撃手段には限りがあるということだ。

 服を汚さずにゾンビを安全に倒すのであれば飛び道具による遠距離攻撃しか無い。
 ワースハンターズの中で遠距離攻撃を得意とするのはエリオットだ。
 彼の操る魔法の矢と氷柱の槍は、対象を認識することさえできれば確実に命中させられる魔術。
 彼こそが攻撃の要となるのだ。
 ただし彼以外にも遠距離攻撃の手段を持つ者はいる。
 ローズマリー・レイドワイズだ。
 先日の戦闘では披露する機会が無かったが、実は彼女も薙ぎ疾風と呼ばれる技を持っている。
 武器を薙ぎ払い不可視の風の刃を撃ち出す魔法剣の一種で、威力こそ並だが超高速で発射される上、込められた魔力により対象に追いすがるため、回避は不可能とされている。
 今のローズマリーが持っているのは愛用のショートソードではなく、ナオミのそれと同じ儀礼用の剣だが、技を扱うのに不自由はしない。
 ただし、それなりに集中が必要になるため、気軽に使えないのが難点だったが……。

 だがこれだけでは足りない。
 それなりに安全な攻撃手段がもう1つ2つ欲しいところだった。

「ん……?」

 その手段を考えているローズマリーの目にある物が映る。
 その視線は大工の男が引いていた荷車に注がれていた。

「その角材って?」
「なんだべ、これがどうかしただか?」
「それ使えるわ。何本か譲ってちょうだい!」

 言うや否や、ローズマリーは角材の1本を荷車から取り上げる。

「ほげっ!? でもそれは領主様の言いつけで買ってきた資材だべ!」
「報酬が入ればそれくらい払ってあげるわよ! で、ガルディス。アンタ、ナイフ持ってるでしょ。貸して」
「持っとるけど、何するんや?」

 言いながらガルディスは服の内側から愛用している細身のナイフを取り出した。
 装備品は全て質入れしてしまったはずなのだが、どうやら彼は万が一を考え、服の中に5本だけ仕込んでいたらしい。

 普段は投擲に使用されるナイフを、ローズマリーは彫刻刀よろしく角材にあてがい、滑らせる。
 長さはそのままに角の部分だけを削り、形を整えていく。
 数分後、ローズマリーの手には元はただの角材だった長物の武器が握られていた。

「はい、ジョナサン。アンタならこれでいけるでしょ?」
「おおっ! サンキュ!」

 ジョナサンが得意とする武器は自身の身長ほどの長さのある棒だ。
 ローズマリーは即席でそれを作り上げたのである。
 狭い洞窟の中では振り回すことはできないが、槍のように突き出せばゾンビと距離を取りながら戦うことができる。

「それにゾンビが相手なら刃物で斬るよりも鈍器でブッ叩く方が有効だしね」
「そういうこったべか……。1本ぐらいなら構わんけんど、それ以上は弁償してもらうだよ」

 幸い角材自体はそれほど高価なものではないらしい。
 それを聞いたローズマリーは続けてもう1本を手に取り、今度は先端の一方を握りやすい形に削り、もう一方は平たくなるように削る。
 出来上がったのは反りの無い「木刀」であった。

「これはナオミの分ね。槍でもいいんだろうけど、使い慣れた形の方がいいでしょ?」
「感謝します、ローズマリー」

 長大な木刀を受け取り2、3度振って感触を確かめる。
 ジョナサンと同じく大きく振り回すのは不可能だが、突きを中心に立ち回れば問題は無いだろう。
 無論これで返り汁を完全に防ぐことはできないが、少なくとも素手で殴り合ったりするよりは遥かにましだろう。

「よし、これで準備は整ったな。後は突破あるのみ!」

 即席の武器を手に今度こそ冒険者たちは洞窟に向き直る。

「逃げる、走る、掻い潜る! 死ぬ気で避けろ! いや、むしろ死んでも避けろ!」

 貸衣装の裾は可能な限りたくし込み、被害は最小限に抑える。
 今回の冒険者は気合が違う。金のために必死で逃げるのだ!

 大工の健闘を祈るという声を背に、ワースハンターズは洞窟へと突入した。

*     *     *

 午後0時35分。
 洞窟の入り口にて、エリカの持つ松明の明かりを頼りに、手頃な石を拾いながらローズマリーがふと思い出したように確認を求めた。

「……ちょっと相談したいんだけど、ここの洞窟って、分かれ道があったら片方はすぐにわかる行き止まり、もう片方は奥に続いてるのが確定してる、だったわよね?」
「あの大工さんはそう言ってたけど、それがどうかしたの?」
「今思ったんだけど、それって問題大アリじゃない」

 ローズマリーの言いたいのは、例えば分岐点でゾンビに襲われた場合、逃げようとして片方の道へ行ったとして、仮にそれが奥へと続いている道であればいいが、もし行き止まりを当ててしまった場合、それ以上は逃げられないということだ。
 しかも襲われている状況で道の奥を悠長に調べている暇など無い。
 2分の1の確率を外してしまえば終わりである。

「素早く奥の状況を確認できる方法があればいいんだけど……」
「じゃあ、松明を投げ込むのは? 少なくとも奥が明るくなれば様子がわかるかもしれないし」

 言いながらエリカは手持ちの松明を確認する。
 荷物袋に入っていたのは5本。
 内2本をそれぞれエリカとガルディスが持つ。

「松明を投げてくれたらアタシが調べるわ。ただし、光源は切らさないようにね」

 ローズマリーが拾った石は投擲用の武器としてガルディスやエリカにも渡される。
 ゾンビに対して石つぶてなど大した対策にはならないだろうが、角材の武器と合わせればある程度はゾンビに対する牽制にはなるだろう。

 松明と石を手にガルディスが洞窟を進む。
 目の前は1本道だ。
 ここは奥の様子を確認する必要は無い。
 奥が三叉路になっていようが、仮にゾンビがいようが確認するだけ無駄だからだ。

 それを証明するかのように奥の部屋からゾンビの咆哮が飛んでくる。

「ボロは着てても心は錦ィィィッ!」
「ゾンビが錦言うなっ!」

 石を投げつけ、ガルディスが正面のゾンビの顔面を潰す。
 これが普段使いのナイフであれば顔面の肉をえぐり取ることができたのだが、洞窟に転がっていただけの石では大したダメージにはならなかった。
 生憎と手持ちのナイフは5本だけ。
 この後どれだけのゾンビを相手にするかわからない状況で、切り札を早々に使うわけにはいかない。

 ゾンビに痛覚は無い。
 殴られ、斬られたところで怯みはしない。
 だからこそ完全に動きを止めるためには叩き潰し、倒してしまうしかない。
 だが今回は依頼内容の手前、倒してしまうわけにはいかない。

「実際に戦ってみるとさ、これホント、キツイね!」

 即席の棍でジョナサンがゾンビを突き飛ばす。
 痛覚のある相手ならば、打撃を与えた箇所によってその動きを止めることができるが、痛覚の存在しないゾンビはどこを殴られようが意に介さず向かってくる。
 そんなゾンビから一切の攻撃を受けないようにするには文字通り距離を離すしかない。
 ある程度は牽制して、逃げるスペースを確保する。
 そのためのジョナサンとナオミだ。

 角材と投石で1、2体ほどは倒してしまい、道を開く。
 その隙を狙いローズマリーが動いた。

「こっちよ!」

 先の道を確認せず走り抜ける。
 松明を投げ込んで先の様子を探りながら進む作戦だったが、体力や精神に余裕のある今は必要無い。
 最初は勘だけで進み、作戦を利用するのは後でいいのだ。

 果たしてその戦略は正しかった。
 追いすがるゾンビを尻目に駆け抜けた先はカーブのある1本道。
 続きの存在する道だった。
 この場にゾンビはいない。

 残してきたゾンビが追いかけてくるが、ゾンビというのは皮膚から筋肉に至るまで腐っているためその歩みは非常に遅い。
 少なくとも今は、投げつけた石を補充する余裕はある。

「とりあえず最初の難関は突破したわね」

 後方のゾンビを気にしながらローズマリーは息を整える。
 洞窟等で主に調査役を任される彼女の精神的疲労は、普段の冒険ではともかく、今回のそれは尋常ではなかった。
 ゾンビとメンバーの動向、松明の本数、洞窟の構造。
 あらゆるものを気にしながら動かなければならないのだ。

「最初の分かれ道で松明作戦を使わずに済んだのは大きいわ。どれだけの分岐があるかわからないもの。だからこの後は遠慮なく松明を放り込んでちょうだい」

 その言葉を受けガルディスとエリカが頷く。
 松明を投げて奥の道を明るくするのは――手元の光源を残す必要があるため――2人の内のどちらかだ。

 左へとカーブする道を抜けると、そこはやはり三叉路になっていた。
 曲がり角を背に、前方と左へと道が伸びている。
 だがその三叉路には今までのそれとは違うものがあった。

「石弓……。なぜこんなところに?」

 発見したエリオットの言う通り、そこには車輪付きの土台に固定された大型の石弓があった。
 1本の矢がすでに装填されており、撃とうと思えば今にも撃てそうだ。

「あの大工のオッサンが作ったんやろか。攻城兵器も作れるとか言うとったし」
「こんな洞窟内で使うとはとても思えませんが」

 軍事的な観点からナオミがガルディスの言葉を否定する。
 車輪の付いた大型の弓というのは、普通、狭い所での対人戦を想定して作られてはいない。
 広い場所で、人間以上の大きさを持つものを攻撃するのに使われるのがほとんどだ。

「50年前の反乱で使われる予定だったものでしょうか。使われる前に生き埋めに遭ったからそのまま放置されたのでしょうね」

 放置された石弓を改めるナオミ。
 もし動くのであれば、これからやってくるゾンビに対する有効な攻撃手段になるだろう。
 ただし、使えればの話だが……。

「その元の持ち主が来たようだ」

 エリオットの言葉に呼応するかのように、4体のゾンビが姿を現した。

「ボロは着てても心は錦ィィィッ!」
「……ッ!」

 お決まりのセリフを叫ぶゾンビの1体に狙いを定め、石弓の引き金を引く。
 だがそこはやはり年代物、引き金は完全に錆びついており動く気配は無かった。

「……やはり無理でしたか」
「50年前のポンコツやからな!」

 ゾンビの攻撃をかわしながらガルディスが前方の通路へと松明を投げ込む。
 投げ込まれた火が、前方の通路が行き止まりであることを教えてくれる。

「前の道はハズレね。残った方を行くわよ!」
「それならちょっと手伝ってもらえませんか?」

 ジョナサンの棒とエリオットの魔法の矢が2体のゾンビを破壊したのを確認すると、ナオミはその場で石弓の車輪を回転させた。

「な、何してんの?」
「これを押すんですよ! これだけ重い石弓です、ゾンビを吹き飛ばすこともできるでしょう!」

 引き金が動かなければ弓は弓としての機能を果たさない。
 だがこの石弓には車輪の付いた台座というもう1つの大きな特徴がある。
 この特徴に最大限働いてもらおうということだ。

 車輪付き石弓を押して、道中のゾンビを巻き込みながら突き進む!

 それができればこの場にいるゾンビはもちろん、次に待ち構えているであろうゾンビも弾き飛ばすことができるだろう。

「動くかどうかわからないでしょうに……」
「おもろいやんけ! 轢き逃げ万歳や、押したるで!」

 こういう突飛な発想には敏感なのがガルディス・ネイドンという男である。
 不安な表情を見せるエリカを横目に石弓に手をかけ、ハーフエルフのそれとは思えない力を込める。

 ジョナサンやエリオットも加わり、数人がかりで押そうとするが、そこはやはり50年物の石弓、そう簡単に動きはしない。
 先程の曲がり角から追いかけてきたらしいゾンビも姿を見せ、状況は非常に悪くなる。だが……。

「おりゃああああああ!!」

 冒険者たちの手によって石弓の車輪は息を吹き返し、自身が取り付けられたものを動かす本来の役目を思い出す。
 その役目を果たさんと、車輪は残る力を振り絞り、その重い体を運び始めた。

 近くにやってきたゾンビを跳ね飛ばしながら。

「ボロは着てても――」
「どけえええええぇぇぇぇッ!!」

 進んだ先には三叉路、そこを陣取るようにゾンビが4体。
 礼服を着た憎き貴族どもを認めた哀れな亡者は、その腐った腕で仇を叩きのめさんと殺到する。
 だが、それがよくなかった。

 貴族どもが押してくる大型のそれ。
 本来自分たちが奴らに叩き込むはずだった車輪付き石弓が逆に自分たちに牙を剥いて襲い掛かってくる!
 腐った体でその牙から身を守ることは不可能だった。
 同胞の1人がその牙の餌食となり、腐ってしまったその身は粉々に粉砕されてしまった。
 牙の方も壁に叩きつけられた勢いで粉々になったようだが……。

 その勢いのまま貴族ども――の姿をした冒険者は残ったゾンビに狙いを定める。
 石弓を押した勢いも手伝ってか、ローズマリーが腰に下げていた儀礼用の剣を逆手で抜き放ち、一気に振り抜く。
 振り抜かれた剣から一陣の風が飛び出し、腐った身に襲い掛かる。
 本来ならば皮膚と肉を切り裂き出血を負わせるのが目的の薙ぎ疾風は、ゾンビの肉体相手には相性が悪い。
 だが撃ち出された風はゾンビを数歩押しのけるには十分な威力を持っていた。

 残ったゾンビも戦士2人の角材攻撃、魔術師による魔法の矢と氷柱の槍でことごとく破壊され、後には石弓によって生み出された砂埃だけが残された。

「って、勢い余ってゾンビやっつけちゃったわよ。ヤバくない?」
「通り過ぎた通路や三叉路にゾンビがまだ残っている。わざわざ戻って掃討でもしなければ十分だろう」

 ローズマリーに答えながらエリオットは荷物袋から松明を取り出し、それに火をつけて右の通路へと投げ込んだ。

「……三叉路。ゾンビが5体いるわね」
「ではそっちが正解ですね」

 荷物袋に入っている残り2本の松明も取り出し、それに火をつけた。
 手元の光源用にエリカが1本。
 投げ込み用にナオミとガルディスが1本ずつ。

「……洞窟の規模と、目的地への距離。次か、次の次くらいで抜けられると見ていいでしょう」

 松明を左手に、角材の刀を右手に、ナオミは右の道を睨む。

「ここまで順調でしたが、まだ油断はできません。何としてでも逃げ切ってみせましょう」

 その言葉に全員が頷き、そして、走り出す。

「ボロは着てても心は錦ィィィッ!」
「しつこい!」

 お決まりのセリフを叫ぶゾンビにナオミの刀が炸裂する。
 服を汚さないように距離を置いた攻撃だったため、無論、大したダメージにはならない。
 続いてジョナサンの棒が別のゾンビを突き飛ばし、エリオット以外の残りの面々が投石を行う。
 ジョナサンに突き飛ばされたゾンビの顔がガルディスの放った石によって砕かれ、その勢いのまま後ろに倒れ込むと、石壁によって後頭部が潰れそのまま動かなくなる。

「生命を摘み取る凍てつく刃よ、彼の者を死の大地へと誘え。凍れ、氷柱の槍!」

 角材と投石の被害を免れたゾンビにはエリオットによる氷柱の槍が突き刺さる。
 魔法の矢と同じく追尾性能を持った冷凍光線が、ゾンビの頭部を貫通する。
 これも本来ならば正常な肉体を持つ生物に対し凍傷を負わせることが可能なのだが、今回に限ってはその追加効果は望めなかった。

 他のゾンビをジョナサンとナオミが押しとどめている間にガルディスが左に伸びる道へと松明を投げ込んだ。

「行き止まり!」

 ローズマリーの声が響く。
 その言葉を確認したジョナサンがゾンビの1体を叩き潰す。
 この場にいるゾンビは残り2体、これならば!

 ゾンビを潰したジョナサンがすぐさま正解の道へと走る。
 その動きを確認した残りのメンバーが続く。
 ゾンビを木刀で牽制するナオミをしんがりに、冒険者はその場から逃げ出した……。

*     *     *

 午後0時45分。

「出口です! 出口に着きました!」

 ゾンビどもを置いて逃げ出した冒険者たちの前に、松明ではない自然の光が見えた。
 天から降り注ぎ、地面に跳ね返って差し込んでくるそれは、間違いなく外の光だった。

「服が汚れたのはいる!? いないわね!?」
「全員大丈夫だ! 外に出て服を元に戻そう!」

 腐臭漂う洞窟を抜けたにもかかわらず、彼らの中で貸衣装が汚れた者はいなかった。
 袖や裾を折り込んだせいで多少は皺ができてしまったようだが、ゾンビの攻撃で汚れるよりははるかにましだ。

 洞窟の外に出ると空気が一変した。
 長雨のせいで湿気った石壁と地面、元は人間だった多くの腐った肉の塊の臭い、それらが完全に一掃された、外の空気。
 生きるとは、まさにこの瞬間を味わうことだ。

 などという私的な感想を考えている暇は彼らには無い。
 時間短縮のために洞窟を抜けたが、それでも多少は時間が経過しているのだ。
 まだ完全に安心はできない。

 全員が互いに衣服の乱れを直し、いざ出発しようとしたその時だった。
 領主邸へと続く道の向こうから男が2人やってきた。
 どちらも50は過ぎているだろうか、頭髪は薄く、髭を蓄えている。
 片方は今の自分たちとほぼ同じ格好――貸衣装などではない、本物の礼服を着用した気品のある男。
 もう片方は類型的な燕尾服と眼鏡で身を整えた男。
 前者を貴族とするなら、後者は執事と言ったところか。

「…………」
「…………」

 洞窟の外で対面した冒険者たちと貴族たちは互いに面食らったような顔を見せる。
 それはそうだろう。ゾンビの腐臭漂う洞窟の前で、綺麗な身なりをした者が顔を合わせるなど、普通なら考えられない事態だ。

 先に口を開いたのは貴族の方だった。

「……私はこの地の領主、ビロードだ。お前たちに質問がある」
「……!」
「お前たちは何者だ。ここで何をしている。まさか屍ではあるまいな?」

 目の前の人物が依頼主たるヘンプ地方領主ビロード公であると理解した冒険者たちの間に緊張が走る。
 馬鹿な、まさか依頼主本人がこんな場所に現れるなど!

「……ご領主様のご依頼にはせ参じた冒険者にございます」

 打ち合わせ通りエリザティカ・レンコップを前に出し、残りの面々は彼女の後ろで跪く。
 この中で貴族――特に今回は礼節を重んじる者を相手にまともに話ができるのはエリカしかいないのだ。

「長雨にて橋が崩れておりましたゆえ、下見も兼ね、屍の洞窟を抜けた次第にございます」
「下見の時間など後でいくらでもあろうに。本当にそれで通ったのか?」

 無論、これはただの方便に過ぎない。
「時間に間に合いそうになかったから」などとは、この場では口が裂けても言うわけにはいかないのだ。

 だがそんな冒険者たちの心情を破壊したくて破壊するようなセリフが執事の口から飛び出した。

「いえ、おそらくは急ぎのあまりここを通ったものかと。約束の時間が迫っております」

 この執事め、余計なことを!
 冒険者たちは口に出さずに毒づいた。
 こちらがどんな思いであのゾンビたちを相手にしたと思っているのだ。

「はて? それにはまだ1時間あろう、わざわざ急ぐ必要もあるまい。だからこそ私は今の時間、会合前に現場の視察ができるのではないか?」
「……?」

 まだ1時間ある。
 その言葉に冒険者たちが驚きの声を上げなかったのは、おそらくは称賛に値する。
 つまりこの領主は、まだ打ち合わせの時間が来ていないから、その時間が来るまでに件の現場を見ておこうとここに来たということだ。
 だがそれでは、自分たちが聞いていた時間と辻褄が合わない。

 その答えは執事の口から語られた。

「僭越ながら、私の一存にて2時の約束を1時と変えて依頼をいたしました」
「…………」
「聞けば冒険者という職に就く者、立ち居振る舞い粗野にして礼節を軽視する者ばかりとか、時間の貴重さを知らぬ莫迦も多いと聞き及びました。いささか不信な者たちです」
「……ッ!」
「万が一にも遅刻などをし、ご領主様が機嫌を損なわれては、その健康に障ると思いまして。ゆえに、1時間早めて知らせた次第にございます」

 この執事め、余計なことを!
 再び冒険者たちは口に出さずに毒づいた。
 確かに冒険者というものはこの執事の言う通り、社会の最下層に属するチンピラ揃い、場合によっては犯罪者まがいの振る舞いを恥と思わず、それどころか誇ってさえいるような輩もいるような手合いだ。
 信用ならないのも無理は無い。
 だが、そんな信用ならぬ連中に依頼を出しておきながら、何という言い草か。

 要は自分たちの都合1つで死ぬほどの苦労をさせられたということだ。
 運悪くその対象となってしまった冒険者たちの間に怒りの炎が燃え上がる。
 それが顕著に表れたのがナオミ・アンダーソンだった。
 腰に差した儀礼用の剣の柄の部分に左手が伸びる。
 左の親指で柄を押し上げ、自由な右手を伸ばせばすぐにでも剣を抜き放てる。
 刃の付いていない偽物の剣だが、目の前のこの絵に描いたような貴族とその手下を殺害するには十分だ。

 それを止めたのは、ナオミの隣にいるジョナサン・グレスティーダだった。
 ワースハンターズの中で最も貴族を嫌っているのがナオミだと知っている彼は、その貴族たちに見えないようにナオミの右手を掴む。

「……ナオミ」
「……ッ!」
「気持ちはわかる。でもここは抑えて。……頼むから」

 隣の者にしか聞こえないその声に、ナオミは引き下がらざるを得なかった。
 確かにここでこの2人を殺してしまうのは簡単だ。
 だが問題はその後だ。
 さすがに立場のある貴族を、一切の大義名分無く害してしまえば、罪に問われるのはこちらなのだ。
 自分だけに全ての責任がのしかかるのであればまだいいが、今は集団で動いているのだ。
 それに、目の前の貴族どもに怒りを覚えているのは彼女だけではない。
 顔にこそ出していないが、他の面々もかすかに体が震えていた。
 それを知ったナオミは剣にかけていた左手を離し、右手にかけられたジョナサンの手を静かに振りほどいた。

「まったく、目に余るお節介だな。しかも黙っておくとは」
「ははっ、申し訳ありません……」

 当然ながら執事に悪びれた様子は無い。
 冒険者を信用していないという部分ではなく、打ち合わせの時間を早め、それを黙っておいたところだけを咎められたのだ。
 つまり、ビロード公としても同じ考えなのだろう。
 冒険者とは信用ならない存在だ、と……。

 ビロード公は複数の冒険者の宿に同様の依頼を出した。
 それはつまり、それなりに使える者であれば誰が来ようと問題無いという意思表示であるが、今回に関してはビロード公は運が良かったと言えよう。
 執事の言う通り、冒険者とは礼節を弁えぬ乱暴者が多く、場合によっては依頼主を殺して金品を奪おうとする殺し屋のような手合いもいるのだ。
 ビロード公の目の前に現れたのが、もしそのような連中だったら……?
 貴族という立場にある者の事だ、万が一目の前の連中に襲われようものなら、おそらくは背後に隠してある私兵集団を差し向けて対抗するだろう。
 そうなれば当然冒険者としては自らの命を守るために必死で戦うことになる。
 どちらが勝つにせよ、血を見ずにはいられない。
 ワースハンターズはそういう意味ではそれなりに良心的な冒険者パーティだった。
 血の気の多い連中ではあるが、必要に応じて忍耐力を見せることができる。
 依頼を受け、最初に目の前に現れたのが、絵に描いたような乱暴者でなかった事が、両者の運命を決定づけたのだ。

「しかしそうなると……、どうしたものかな」

 そんな冒険者たちの心情など知らぬ顔で、ビロード公は思案する。

「普通ならこのような洞窟を抜けるなど気狂いの沙汰に違いないが――」

 言いながら領主は礼服で着飾った冒険者たちを見やる。

「泥1つ付けてないとは、な……」

 その言葉に真っ先に反応したのはエリカだった。
 ここがチャンスだとばかりに、対貴族用の歯の浮いたような美辞麗句を並べ始めた。

「我々にとって、この程度の洞窟は困難などと申しません。暗闇など網の目隠し、屍の歩みなど風に揺れる芦の葉と同じでございます。景色の違いを除けば、石畳の街路を往くのと大した差はありません」
「ほう……」
「その証拠にご覧ください。この場には腐臭を引きずる者も、足を擦った者もおりません。身の程を知らずして自負するものでないことは、見ての通りでございます」

 我ながらふざけたセリフだ、とエリカは思った。
 普段の交渉でもこのような馬鹿馬鹿しい言葉を使うことは無い。
 いかに貴族とは外面の美しさだけに狂喜するものか、これだけでわかるというものだ。
 だがこの場においてはいかに自分たちの存在をアピールするかが重要なのだ。
 そのためならばいくらでも気持ち悪い言葉を吐いてやろう……。

 果たしてその思いは天に届いたらしい。

「ふむ、疑う余地が無い。冒険者たるもの、まさかこれほどとは……」

 言いながら領主はやや後ろに控えた執事に目をやる。

「爺よ、お前の見分も当てにならんな」
「左様にございますな。しかし、むしろ当てにならず良かったように思います」
「そうだな、幸運と言うより他は無い。なんとも良い巡り合わせよ。……しかしそうなると、いささか問題があるな」

 領主の言う問題とはこうだった。
 人の能力には正当な評価と正当な代価が必要で、今回の仕事は銀貨1500枚で依頼したが、目の前の冒険者にはそれでは不釣り合いである。

「爺よ、増額だ。今日の話し合いでは、この報酬についても論議しよう」
「多大なるご厚意、痛み入りましてございます」

 ワースハンターズは確信した。
 自分たちは賭けに勝ったのだ、と。

 領主邸へと向かうヘンプ地方領主ビロード公とその執事に続き、身の丈に合わぬ礼装で身を包んだ冒険者たちはその背を追った……。



・プレイしたシナリオ
シナリオ名:武闘都市エラン
対象レベル:1~10
作者   :飛魚 様
入手場所 :ギルド→作者ホームページ

シナリオ名:Sad in Satin
対象レベル:1~3
作者   :Pabit 様
入手場所 :ギルド→ベクターのダウンロードページ

・今回の収支
所持金  1600sp
支出-   600sp…武闘都市エランにて【盗賊の矢】を購入
  -   600sp…GM屋オリジナル【雷精の掌】の習得分として消費
収入+  2000sp…報酬
支出-    15sp…2本目の角材の購入費として消費
―――――――――
合計=  2385sp

・入手品
(シナリオ開始前)
スキル…盗賊の矢→ガルディスへ
   …雷精の掌→エリカへ

・取得クーポン
全員    …Sad in Satin - 完全突破(+1)

・備考
レベルアップ→エリカ…レベル2ヘ
盗賊の矢、雷精の掌はシナリオ開始前に入手。それらの支出はリプレイでは「宿の修理費として消費」に変更。

Sad in Satin・後書きへ

Sad in Satin・1←Prev

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Sad in Satin・1

 冒険者という存在は、全てがそうとは言わないが主に何かと戦うのがその仕事である。
 最も多いのがゴブリンやコボルトをはじめとした妖魔や怪物の類であり、野盗や山賊といった悪党の集団がそれに続く。
 場合によっては自分たちと同業である冒険者や、稀に貴族や王族と事を構えることもあるだろう。

 だが上に挙げたこれらは確かに戦う相手にはなり得るが、必ずしも冒険者にとっての「敵」になることは無い。
 基本的に何でも屋扱いされる冒険者の中には、一切の戦闘行為に参加しない者も含まれるからだ。
 もっとも、そのような存在は業界内では非常に稀なのではあるが……。

 では、世の中にいる全ての冒険者にとって共通の「敵」とは何か。
 特定の攻撃しか通じない幽霊の類か。
 一定の地域を治める領主等の権力者の類か。

 正解は、依頼が来ない事と、それに伴う貧困である。

 冒険者は社会の底辺に位置する存在である。
 一部例外も存在するが、基本的には定職に就かずわずかな金銭を頼りにその日暮らしを余儀なくされているのがほとんどだ。
 外部から持ち込まれる依頼とそれについてくる報酬を頼りに生き永らえている。
 それらが無くなるということは、すなわち死に直結するのと同義なのだ。

 その状況を打破するためにはどうすればよいか。
 さらなる依頼と報酬を自分たちの所に引き寄せるために、冒険者はその大半が力のある者――貴族や王族とのコネクションを求めるのだ。
 それら有力者とのコネが成立すれば、まずその冒険者及び所属する宿は有力者の庇護に置かれる。
 これで他の貴族等から不当な扱いを受けるのを回避することができる。
 自分たちと繋がったその人物の力が強ければ、あるいは評判が良ければ他の有力者からの依頼を受けることも可能になる。
 それこそ場合によってはその日暮らしの冒険者から貴族お抱えの私兵集団へと成り上がることも可能だ。

 食うことに困らない。
 それは多くの冒険者にとっての夢である。

 だが当然ながら冒険者というものはそんな貴族や王族との繋がりなど持っているはずがない。
 極稀に初めから強力な貴族とのコネクションを持っている冒険者もいるが、そのような存在は砂粒の中から1粒の砂金を見つけるに等しいほどの奇跡のようなものだ。
 では、並の冒険者が有力者とのコネクションを持つにはどうすればいいか。

 貴族や王族が自分たちに依頼を持ち込んでくる偶然を待つしかないのだ。

 その日の早朝、冒険者の宿「星屑の夜空亭」はいつになく煌びやかな光に包まれていた。
 築何10年、壊れた箇所を修繕しながら倒壊だけは防いできた宿は、おおよそ金銀財宝のきらめきとは無縁の場所である。
 だがこの日だけは違った。

 宿に唯一所属する冒険者パーティ、ワースハンターズ。
 今日の彼らは、普段の安い布ばかりの格好からは想像もつかないほどに美しく輝いていた。

「おっ、随分めかし込んだな。あの依頼か、ゾンビ退治の奴?」
「そう、その依頼や。わざわざ貸衣装屋に行ってきたんやで」

 見た目が完全に変わってしまった貧乏冒険者の姿に宿の亭主は複雑な表情を浮かべる。
 今のワースハンターズは絹やサテンの布地に金や銀の輝きを含んだ糸の刺繍、金箔や宝石が散りばめられた、高級、いや、高価な服に身を包んでいたからだ。
 普段の彼らの生活態度を考えれば、このような服を着ているところなどまず考えられない。
 いや、それどころか彼ら自身がまずこういった服装をよしとしないと公言して憚らないのだから、それを知っている者にしてみれば今のこの状況は夢か幻にしか映らないだろう。
 彼らの格好を一言で表すのなら、まさに「絵に描いたような貴族」だった。
 どちらかといえば貴族嫌いを主張する彼らがなぜこのような格好をしているのか。

 それは数日前に遡る。

 星屑の夜空亭は冒険者の宿であるが、宿として使われるのは階段を上がった2階部分である。
 下の1階部分は食堂を兼ねた酒場として使われ、その利用者は冒険者に限らない。
 宿に所属する冒険者は当然、別の宿に所属する同業者が気分を変えてとばかりに食事や酒を楽しみに来たり、あるいは交易都市リューンに住む一般市民が外食のつもりで酒盛りに来たりするのだ。

 専門の料理人がいるレストラン等の飲食店と比べれば、さすがに宿で出される料理は質において劣る。
 だがその分それなりの安値で提供されるので、意外と宿に来る客は多い。
 また星屑の夜空亭には他の冒険者の宿とは違う楽しみもあった。

 ワースハンターズの1人、エリザティカ・レンコップ――愛称エリカは冒険者でありながら同時に歌い手も務める。
 片腕に抱えられる小型のハープを弾きながら、世に出回っている既存の歌を歌う。
 その歌を聴きながら飲む酒を楽しみにやって来る客も多い。
 エリカはその性格上ハイテンポの歌は歌いたがらず、どちらかといえばゆったりとしたバラードを中心に歌う。
 複数の楽器を激しく鳴らし合うロックもいいが、静かな音楽と料理を肴に飲む酒もまたいいものだ。
 だが例外というのはどこにでもあるもので、エリカのそうした歌が気に入らないとわめく迷惑な手合いも存在する。

 そしてその日もそうだった。
 どこかですでに飲んでいたのだろう、初めから酔っていた男が数人、客として星屑の夜空亭にやって来た。
 その日も冒険者の傍らの副業として歌っていたエリカだがそのエリカに酔っ払いが絡んだのだ。

「やめろやめろ! そんなチンケな歌で盛り上がるわけないだろ!」
「酒場は男の世界だぞ! 女子供ごときが何いっちょまえにここにいるんだ!」
「ちょっと顔がいいからっていい気になってんじゃねえぞ!」

 もはや後半はただの言いがかりであるが、もちろんそのようなヤジや暴言程度に怯むエリカではない。
 宿に来たばかりの頃であればいざ知らず、今ではそれなりに荒事もこなす女である。
 それらの言葉を無視して歌い続けていると、今度はその態度が気に入らなかったのか、酔っ払いの1人がエリカに詰め寄ってきた。

「おい何様のつもりだこのガキ! 人の親切な忠告を無視するとはどういう了見だ!」

 さすがに目の前にまで来られると演奏を中止せざるを得ない。
 ハープを爪弾く手を止めて、エリカは男に向き直る。
 それと同時に酒場のカウンター、及び酒場内にいるある人物に視線を送る。
 すぐさま視線が返ってくる。
 その視線の意味は、大丈夫だ、という合図。
 それを理解したエリカは静かに口を開いた。

「……別にあなたの忠告が欲しいから歌ってるわけじゃないんですけどね」
「何!?」
「そもそも私がここでどんな歌を歌っているかはみんなが知っている通りです。それを知らずに入ってきてそれで文句をつける方がよほど無礼なのでは?」
「……ッ!」
「まあ、酔っ払い風情に言ったところでどうせ改善なんてするわけないでしょうけども」

 そこまで言ったところで男の手が振り上げられた。
 このまま何もせずにいれば間違いなくエリカに絶対の暴力が浴びせられる。

 だがそれを易々と受け入れるエリカではなかった。
 男の手が振り下ろされる前に、逆に男の懐に飛び込み左手をその腹に押し当てる。
 瞬間、エリカの左手から光が迸ったかと思うと、男の全身が激しい痙攣を起こした。

 冒険者としてのエリカは精霊術師としての役割を果たす。
 そのエリカが扱う精霊術は、力を持った精霊を召喚する「召喚術」ではなく、精霊を自分の身に宿しその力を行使する「憑精術」でもない。
 精霊の力の一端を瞬間的に発現させる「霊験」に近いもので、一瞬だけ精霊を呼び出すそれとは違い、エリカは自らの体でもって精霊の力そのものを操るのだ。
 エリカの手から発せられたそれは雷の精霊の力による電撃。
 どちらかといえば腕力の無いエリカの数少ない近接戦闘の技である。

 酔っ払いの1人がエリカの電撃で倒されたのを見た他の酔っ払いが、仲間の仇だとばかりにエリカに殺到する。
 だがその手がエリカに触れることは無かった。
 男たちが動いた瞬間、酒場内にいた別の冒険者2人がその男たちを殴り倒したからである。
 行動を阻害された酔っ払いたちはそれに激昂し、今度は邪魔者の冒険者に殴りかかる。
 だが所詮は勢いだけがいいだけの素人。
 荒事のプロフェッショナルに敵うはずがない。
 痙攣から復帰した男もまたその戦闘に参加するが、今度は少女から蹴りを食らい酔った頭を揺らされる。
 仲間の1人は金髪の冒険者に頭から投げ落とされ、もう1人は長身の冒険者から顔面に拳を叩き込まれる。

 場違いな酔っ払い3人がふらつく足で酒場内を歩き回る。
 冒険者たちから離れて体勢を立て直さんとたたらを踏んだのだが、それがいけなかった。
 冒険者から離れることには成功したが、今度は冒険者とは関係ない別の客から酒瓶の一撃を貰ってしまう。
 エリカの静かで優しい歌声を聞きにやって来たのにそれを邪魔されたファンからの無言の抗議である。
 それを皮切りに星屑の夜空亭は、小さな闘技場と化した。
 そこで行われたのは戦闘やケンカと呼ぶのもはばかられる、とても醜い乱闘騒ぎだった。

 エリカに防衛の許可を出したのは確かに宿の亭主だが、さすがにこの事態には頭を抱えざるを得なかった。
 当事者であるエリカと、交戦能力の無い宿の娘はすでに退避させたが、残った冒険者と酔っ払いどもは当然乱闘を続ける。
 結果、酒場の備品の半数以上が使い物にならなくなり、宿の亭主はその損害賠償請求に追われることとなった。
 店に来ていた乱暴な酔っ払いを含めた客からは一定量の金銭を求めたが、それでも被害の方が大きい。
 交戦の許可を出された冒険者に罪は無いように思われるが、宿の亭主曰く、

「さすがにやりすぎだ。むしろ乱闘が始まったらそれを鎮圧するのが普通だろうに、嬉々として参加しおって」

 とのことで、さすがに反論できなかった冒険者たちも弁償せざるを得なかった。

 その金額、銀貨にして1200枚。
 こうして彼らは、早急に金策に走ることになったのである。

 そんな中、1つの依頼が舞い込んできた。

「ビロード邸近郊の洞窟に動く屍が出没する。これらの一掃と、事後処理、計画の立案について仕事を依頼する。報酬は銀貨1500枚。500枚は前金として支払う。仕事の詳細と、最終的な雇用の決定については、面談にて話す。×月×日の午後1時に、ビロード邸へ来られたし。なお、時刻と礼節を弁えぬ者は不要である」

 ヘンプ地方領主ビロード公の署名――厳密にはその執事によるもの――が成されたその依頼書は、星屑の夜空亭だけに出されたものではなく、どうやら複数の宿に同時に出されたものであるらしい。
 特定の冒険者を頼ったものではなく、受けてくれるのであれば誰でも良いのであろうそれに、彼らが飛びつくのは必然と言えた。
 公爵からの――それも特に服装や礼儀にうるさいビロード公からの、貴族からの、……依頼。
 女軍人ナオミ・アンダーソンを筆頭として、全体的に貴族嫌いを主張する彼らだが、宿の弁償のために金策に走らなければならない事を考えれば、もはや背に腹は代えられぬとばかりにこの依頼を受けることに決めた。

 それから期日までの数日間、貴族の作法を知るナオミ――から知識を教わったエリカ指導の下、ひと通りの礼儀作法をその身に叩き込み、絵に描いたような貴族を演じられる程度に仕上げたのである。

「依頼書にまで忠告を入れる徹底振りやからなぁ。煩わしいったらあらへんわ」
「まあ、中心になって話を進めるのは私なんですし、とりあえずみんなはそれっぽく見せることに集中していただければと」

 着慣れない礼服を煩わしく思うガルディスをエリカがなだめる。
 普段からお洒落には気を遣うエリカは堂々としたもので、完全に礼服を着こなしていた。
 先日のリヒャルト・フォン・リンツの依頼の時と同じように、エリカが交渉役を担当することになっていた。

「ご苦労な事だ」

 宿の亭主はそんな彼らの姿に苦笑を返した。
 酒場の弁償のためとはいえ不本意なことをさせているのにはさすがに心が痛む、といったところか。

 だがそれにしても、と思う。
 なぜ手持ちの金銭に困っている彼らが、そのような礼服の類を借りることができたのか。
 礼服1着だけでもかなりの金銭を要求されるはずなのだが……。

 それに答えたのはエリオットだった。
 賃借料の確保のために普段着や武具の類を質入れしたのだという。
 エリオットだけは例外で、賢者の杖をその手に持っていたが。

「おいおい……。その格好でゾンビ退治する気か?」
「まさか、交渉の時だけです。前金を頂いたらすぐに払い戻すつもりでいます」

 エリカによればこうだ。
 依頼書には「仕事の詳細と、最終的な雇用の決定については、面談にて話す」とある。
 面談を行った結果、雇われない可能性も出てくるのだ。
 これはつまり、その場でゾンビ退治を行うことを示しているのではない。
 荒事は面談の後、自分たちの雇用が決定してから始まるのだ。

「つまり荒事はもう少し先の話。今日は話し合いだけで日帰り、って事よ」

 エリカの説明をローズマリーが引き継いだ。
 自分たちの実力を考えれば、面談さえ乗り切れば報酬獲得は間違いなしである。

「なんともうまい皮算用だ。1500の依頼となればこうも目が眩むかね」
「いや、目が眩まざるを得ないでしょ、今回は」

 何を言ってるんだ、とばかりにジョナサンが噛みついた。
 そもそも自分たちに原因があるとはいえ、1200もの賠償金を要求してきたのは他ならぬ宿の亭主ではないか。

「まあそれに、わずかな投資で大金御礼、ついでに貴族のコネも付くとなればな。計画、準備、収支計算にリハーサル、戦力分析に対ハイソ用礼儀作法まで徹底したのだ。……不本意ではあるが」

 エリオットが言った通り、不本意ではあるものの失敗する要素はことごとく排除した。
 多少の不確定要素はあるだろうが1000枚の黒字は確実だろうというのが彼らの主張だった。

「……たくましいことで」
「重き暗雲たちこもり、冷たき長雨降り注いだ昨今。青き空、陽光こそ我らが祝福。のみならず、我らがご主人よりお褒めの言葉を授かろうとは。おお、まさに最上の門出!」
「やめんか。全く似合っとらん」
「わはは、そぉやな!」

 徹底的に勉強したのだろう、まったく似合わない口上をこれまたまったく似合わない立ち居振る舞いで披露したガルディスに、亭主は渋い顔を浮かべる。
 もっとも、本人もやりたくてやっているわけではないのだろうが……。

「というかそもそも……」

 メンバーの中で最も嫌そうな顔をしたナオミが苛立ったように口を開く。

「そもそもあなた方が宿で大暴れしなければよかった話でしょうが。いや、金策自体はいいのです。ですがよりによって貴族からの依頼を受けようとは……」
「それはホンマに悪い思てるがな。ただあれはエリカを守るためにやな」
「それは構いませんが、どうせなら酔っ払いどもをまず宿から追い出してですね――」
「文句言うのは後よナオミ。そろそろ馬車の時間」

 不満たらたらのナオミをローズマリーが遮る。
 依頼主のいるヘンプ地方へは馬車でも5~6時間はかかる距離にある。
 今から行けば十分に間に合うが、ここでケンカでもして馬車に乗り遅れてしまえば1000の黒字どころか大赤字間違いなしである。

「昨日おとといの雨で地面がぬかるんでるからな。気をつけろよ」
「そういえばすごい雨だったよね。おかげで礼儀作法の練習も宿の中でしかできなかったし」
「水たまりでも踏んづけて靴や服を汚しちゃったら大変よ」

 無論、そのような事が無いように練習に練習を重ねてきたわけだが、確かにそれは1つの懸念事項だった。
 いくら雨のせいで地面がぬかるんでいたからといって、泥を跳ねさせてせっかくの貸衣装を汚してしまっては意味が無い。

 貸衣装を汚してはならない。
 この事が彼らに多大なる試練を与えようとは、誰も予想だにしていなかった。

*     *     *

 同日、正午。
 ヘンプ地方、領主邸付近の川縁にて。

「……すみません。質問していいですか?」
「却下。余計な質問は禁止だ」
「橋、見当たらないんですけど……」
「そんなもの見ればわかるッ!」
「どうするって言うんですか! 約束の刻限まで後1時間しか無いんですよ!?」
「それをどうするか今考えているんだろうがッ!」

 リューンからの馬車でヘンプ地方までやって来た冒険者たちだったが、彼らの眼前には広大な川が広がっているだけだった。
 本来ならば自分たちは馬車に乗ったままこの川に架けられているはずの橋を渡り、約束の午後1時より20分も前に領主邸に到着しているはずだった。
 だが目の前に橋は無く、橋の向こうまで運んでくれるはずの馬車もとうにどこかへ行ってしまっていた。
 普通ならば別の道を通って領主邸の前まで馬車を走らせるものだろうが、乗ってきた馬車の御者はこの惨状に表情1つ変えず、これ以上は進めないから降りろとばかりに冒険者たちを降ろしたのである。
 当然冒険者としては文句の1つでもぶつけたかったが、その前に御者は当然のごとく冒険者たちを無視していずこかへと走り去ってしまったのだからタチが悪い。

「間違いなく長雨のせいだよね。あの雨で川が増水して橋が流されちゃったんだよ」

 呆然とした顔のままジョナサンが状況を考察するが、そのようなことは言われずとも誰もが理解していた。
 今必要なのは、いかにしてこの川を越えて、その向こうへと辿り着くか、その手段である。

「……泳いでいくのは却下よね」
「流れが速すぎるから当然ね。それに貸衣装に泥水を浴びせるわけにもいかないし」
「水の精霊に頼んで流れを抑えてもらうとかできないの? あるいは風の精霊に頼んで空を飛ぶとかは?」
「……昔の私ならできたと思うけど、今は無理よ」

 エリカは精霊術師である。
 その力を利用して自然界に存在する精霊に働きかけ、自然の流れを操作することはできなくはないだろうが、とある事情により今のエリカにはそれだけの力を振るうことは許されなかった。

「となれば、回り道しか無いわよね……」

 げんなりした顔でローズマリーが呻く。
 確かに川の流れを無視できる迂回路を探し当てれば、少なくとも身に着けている礼服を汚さずには済む。
 だがそれでは当然、刻限を大幅に過ぎてしまう。
 事情が事情だけに多少の遅刻は許されても良いとは思うが「時刻と礼節を弁えぬ者は不要」と依頼書にあったことを考えれば、

「いかなる事情があろうとも約束の刻限に間に合わなかったのは事実。第一、長雨で橋が流されていることも想定した上で行動するのが人として当然というものだろう」

 と無茶な言いがかりで断罪されてしまうのは目に見えている。

 となれば、まずは聞き込みである。
 幸いにも自分たちがいるのはヘンプ地方の中。
 であれば、土地勘のある者が近くにいるかもしれず、その人物から最適な迂回路を聞き出せるかもしれない。
 場合によっては船を借りるのも手だ。

 そうして聞き込みを開始しようとした時だった。

「あんれ、おめぇら何してるだ?」

 立ち尽くす彼らの所に男が1人やって来た。
 大量の角材が載った荷車を引いているところから、どうやら大工であるらしい。
 聞き込みの手間が省けたとばかりに、冒険者たちはその大工らしき男に殺到した。

「ななな……、なんだべ、おめぇら?」
「ここの領主、ビロード公に用があるんだ。ただ橋が無くて困っててさ、他の橋とか知らない?」
「領主様に? ははぁ、あんたらがゾンビ退治に来るっていう……」

 ジョナサンの一言でどうやら男の方も何かを察したらしい。

「冒険者よ。自己紹介はまた今度ね。約束まで1時間しか無いの、下手すれば遅刻しちゃうわ」
「そりゃ大変だべ。うちの領主様は時間にお厳しいからなぁ、遅刻しようもんなら門前払いもおかしくないべ」
「だから聞いてんのよ。船を持ってる人を紹介してくれてもいいケド?」

 そんなローズマリーの問いに男は無理だと返した。
 橋が無いこの状況では1時間で川向こうまで行けるような道など無く、まして川を渡れるような船を持っている者もいないという。

 そして当然そのような返答に満足するローズマリーではない。
 低い身長を精一杯伸ばして男に掴みかかる。

「だから時間が無いって言ってんでしょ! 何でもいいから思いつきなさいよ!」
「こここ、怖い顔してもダメなもんはダメだべ。川に流されるまでここにあった橋が唯一だったべさ。他の方法なんて無えべ」
「だからそこを何とかって言ってんのよ! わかるでしょ!?」
「わ、わかるけんども……」

 そこまで言って男はふと思い出したように言った。
 厳密には川を渡る方法が無いこともないそうだ。
 もったいぶらずに教えろと迫るローズマリーの気迫に負けて、男は観念したように話し出した。

 使えるルートは2つ。
 その内1つはずっと遠い川の上流にあり、そこへ行くには長い山道を歩かなければならない。
 かなりの大回りになってしまい1時間では到底間に合うわけがない。
 まして普段の冒険者としての格好であればいざ知らず、現在の彼らの格好は全身礼服の絵に描いたような貴族である。
 山道を歩くのは諦めるべし、というのが男の結論だった。

 ならば問題は残ったもう1つのルートである。
 そちらはどうも上流に向かって10分程度の所にあるそうで、そちらから行けばおそらくは時間に間に合うそうだ。

「だったら決まりね! アタシたちには文字通り他に道が無いのよ、早く案内してちょうだい!」
「ほ、本当に行くだか? オラは構わんだけんど……」

 小さいのに怖い女の子だ。
 領民の男はやれやれと冒険者たちを該当の場所へと案内する。

 道すがら聞いた話では、この男はやはり大工であるそうで、今は橋を架けるための角材を運んでいるところだったという。
 今より水が引けば彼が橋を架けるそうだ。
 何でも彼は代々この領内で大工をやってきたエリート中のエリート大工だそうだが……。

「自慢のノコギリさばきに奥方はみんなイチコロだべ。ハッタリかまさず揺り籠から攻城兵器まで何でも作ってみせるだ。でも結婚だけは勘弁だぁ」
「どぉでもええわ」

 かなり無駄な情報を聞いてしまったとばかりにうんざりした表情を隠さないガルディスであった。

 午後0時15分、川の上流にある丘の麓に到着した一行の前に洞窟が見えた。
 この洞窟を抜ければ川向こうに出られるとのことだそうだ。

「何よ、こんな便利なものがあるなら最初から言いなさいよ」

 喜色満面といった様子のローズマリーに、先程まで詰め寄られていた大工の男が安堵の息を漏らした。

 確認したところ、この洞窟はさほど複雑な構造をしておらず、分かれ道こそあるものの基本的に一本道であるため迷うことは無いという。
 仮に片方の道が行き止まりであれば、もう片方の道は確実に繋がっている。
 逆に片方の道が繋がっていれば、もう片方の道は確実に行き止まりということだ。

「それなら大丈夫ね。ありがとう、助かったわ」
「あっ……、だどもこの洞窟は……」

 言いながら冒険者たちは意気揚々と洞窟へと向かう。
 この洞窟を抜けさえすれば打ち合わせの時間に間に合う。
 間に合えばエリカの交渉で間違いなく好条件を引き出せる。
 すなわち、多額の報酬をせしめることができるのだ!

 大工の男の言葉を完全に聞き流し、ワースハンターズは確実に辿り着ける理想郷へとその1歩を踏み出した。

 ……その時だった。

「ボロは着てても心は錦ィィィッ!」

 突如、洞窟の奥から襲い掛かる叫び声!
 当然その標的となったのは金銭に目が眩んだ哀れな冒険者ども!

「ボロは着てても心は錦ィィィッ!」
「ん゛あ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!?」

 情けない悲鳴を上げるジョナサンを先頭に、冒険者たちは入り口の外までそれはそれは見事な全力疾走で帰ってきた。
 山歩きに不向きな礼服を着用した状態にも関わらず、普段と変わらないかそれ以上の速度で彼らは叫び声からの逃走に成功した。

 息も絶え絶えに入り口まで引き返してきた冒険者を待っていたのは、大工の暢気な労いの言葉だった。

「良かったぁ、無事だったべか」
「ふ――」

 真っ先に息を整えることに成功したのはローズマリーであった。

「ふざけないでよっ! ゾンビがいるなんて聞いてないわよッ!?」
「そりゃそうだぁ、オラだって聞かれてねぇ」
「…………」

 大工の男の涼しい返事に、ローズマリーは逆に何も言えなくなった。

 ひとまず冷静になり、エリカが代表して大工の男の話を聞くことにする。

「この洞窟、ゾンビが出たということは……」
「多分、ご推察通りだべ。あんたらの仕事現場だぁ」
「……他に道はありませんか?」
「さっきも言うたべさ。短いのはここだけだぁ。別の道は大回りになるだ」

 最悪だ……。
 この場にいる冒険者の誰もが同じことを考えた。
 約束の刻限は迫っているため、大回りはできない。
 しかも今回自分たちは通常の装備のほとんどを質入れしてしまっているため、およそ戦闘が可能な状態ではない。
 ナオミとローズマリーは普段使いの武器の代わりに儀礼用の剣――ただし刃の付いていない完全な飾り物である――を持っており、戦力に欠ける。
 魔術師のエリオットだけが魔術師のシンボルとして杖を持つことが許されているが、明確な戦闘力はそれだけ。
 つまり、目的達成のためには、このゾンビが群がる洞窟を、ほとんどの戦闘を無視して一切の無傷で突破しなければならないということだ。

 どう考えても不可能事だと思うが、それでも何かしらの打開策を求めて大工の男から情報収集を図ることにする。

 男の話をまとめるとこうだ。
 今から50年前、現在のビロード公から数えて先々代の領主が地方を治めていた当時、領民の反乱が起きた。
 それというのも、領民は重い税を課せられ、当然それに対する慈悲は無く、身につけるものはボロ布のみという有り様で、しかも当時の領主は自分の服だけは立派に飾っており、こう言い放ったそうだ。

「麻が無いなら繻子(サテン)を着ろ」

 当然、領民はそれに反発。
 反乱も起きようというものだ。
 そして洞窟のゾンビはその当時の反乱を起こした領民たちなのだという。
 その当時も今日のように長雨の上がった後で、今日の日と同じく橋が崩れていた。
 襲撃をかけようとする領民たちは、今の冒険者と同じく目の前の洞窟を使って領主邸へと向かおうとしたのだが、その時に土砂崩れに遭ってしまったそうなのだ。
 領民たちは当然生き埋め。
 それから50年の時が経ち、溜まりに溜まった怨念が彼らをゾンビとして蘇らせたというわけだ。

 洞窟のゾンビたちはその当時の怨念によって動いている。
 そのゾンビたちには非常に変わった特徴があった。
 衣服に対する執着心である。
 反乱の引き金となったのは何よりも上記の領主の一言だ。
 だからこそ、今の冒険者たちのような上等の服を着ている者に対し激しい怒りをぶつけてくるのだ。
 逆に言えば、ボロを着ていれば仲間だと思い込んで何もしてこないということなのだが……。

 だがここで疑問が湧いてくる。
 当時の領民たちはこの洞窟を抜けようとして土砂崩れに遭った。
 であれば、その当時と全く同じ状況である今、この洞窟を抜けようとする自分たちが土砂崩れに遭う可能性があるのではないか。
 だがその疑問は大工の男によってあっさりと解決した。

「土砂崩れなんて起きるわけねぇだ。ほれ、見ればわかんべ」

 言われて洞窟を改めて観察する。
 なるほど、確かに洞窟は土よりも岩で固められた頑丈な造りになっており、そう簡単に崩れる心配は無さそうだ。

「でも50年前は土砂崩れが起きたんですよね、雨のせいで?」
「誰も『雨のせいで』なんて言ってないだ。まあ、表向きはそうだけんど」
「……ああ」

 その言葉でエリカは理解した。
 なるほど、確かに土砂崩れを起こせるのは自然や神様だけではない。
 知識と技術さえあれば誰にでもできるということだ。

 当時の状況と、目の前に広がる状況、そして今回出された依頼の内容を照らし合わせれば、1つの答えが見えてくる。
 なぜヘンプ地方領主ビロード公がこのような依頼を出したのか。
 そしてなぜ依頼内容にゾンビの一掃の他、事後処理、計画の立案まで含まれていたのか。

「今の領主様は厳しいだども、理解はあるお方だべ。でなけりゃ50年前に反乱した領民を供養しようなんて考えないべさ」
「……要は50年前の尻拭いを自分に代わってしっかりやれと。こんな馬鹿げた騒ぎになると考えもせずに、ですか」
「……この娘っこ、なんか妙にピリピリしてんなぁ」
「最近ストレスが溜まってるんです。そっとしておいてあげてください」

 目の前の若い女が貴族嫌いであるとは知らぬ大工に、妖精の娘は苦笑いを浮かべるしかなかった。

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人が死んだら悲しんでいい

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家宝の鎧・後書き

 第2回のシナリオはgroupAsk様より「家宝の鎧」でした。
「豚が爺様の鎧を着とるっ!!」はカードワース史に残る名言の1つではないでしょうか。

 さてこのシナリオについて思うことがあるのですが、このシナリオではリヒャルトの事を一貫して「リヒャルト卿」と表記しており、登場人物もリヒャルト卿と呼んでいるんですね。
 ただ実は私、この呼び方にどうも違和感を覚えてしまうんです。
「〇〇卿」というのは言うなれば貴族や騎士に対する敬称なんですが、この手の敬称って「名前」の方につけるものなんでしょうか。
「先生」とか「捜査官」とかの広義の敬称は大抵は「名字」の方につくはずですし(親しい間柄だったら名前の方につけることもあるでしょうが)。
 銀河英雄伝説の短編ボイスドラマでもオスカー・フォン・ロイエンタールが「こちらのミッターマイヤー卿が(フルネームはウォルフガング・ミッターマイヤー)」と言っていたので、どうしても「名前の方に卿をつける」というのがなんとなく嫌なんです。

 そのため、リヒャルトに対する呼び方はこのリプレイではほとんど明記しておりません。
 せいぜいナオミの「リンツ卿」とかガルディスの「おっちゃん」程度です。
 また今後のリプレイに関しても似たような表記になると思いますので、悪しからず、ご了承願います(もしかしたら私の、ひいては銀英伝での言い方が実は間違っている、という可能性もあるでしょうがw)。

 後、エリオットで妙な設定が出てきましたがこれに関してはシステム的にどうこうするつもりはありません。
 あくまでも文書表現を盛り上げるためのフレーバーでしかありませんので……。

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Author:GM屋
しがないカードワースのリプレイ書き。とある所でTRPGのプレイヤー&ゲームマスターもしております。
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